- どの部門でも、AIに最初に任せられる仕事は同じ形をしています。書類を読み、システムに入力し、人の確認に回す仕事です。
- この記事の例はすべて、AIが読むもの、作るもの、承認する人、最初の1週間にやることの4項目で書いています。
- 最初の三つは、同じ部品を使える別々の部門から選びます。
- 誰も確認していない仕事、間違えたら取り消せない仕事、データがまだ何か所にも散らばっている仕事は後回しにします。
どの部門にも同じ動きが隠れている
社内の席を一回りしてみてください。経理は請求書の数字を会計ソフトに打ち込み、営業はLINEで届いた顧客のメッセージをExcelに写し、総務はチャットで届いたファイルの名前を付け直しています。書類は違っても、動きは同じです。読んで、打ち直して、確認に回します。
そこで、以下のAI活用事例はすべて同じ4項目で書いています。この記事は企業のAI活用ガイド:効果、仕組み、導入の手順の第2章で、第1章の測り方を前提にしています。最初の部門の選び方は人件費を削減したいなら、AIはどの部門から導入すべきか?にまとめました。
日系企業のタイ拠点では、請求書はタイ語で届き、顧客や取引先とはLINEでやり取りし、社会保険や税の書類はタイの様式です。以下の例は、この前提に立っています。
営業:問い合わせの登録と見積書の下書き
問い合わせ:AIはLINE公式アカウント、Webサイトのフォーム、メールで届いた顧客のメッセージを読み、関心のある製品と急ぎの度合いを付けてCRMに登録します。承認は不要で、営業担当は誰に先に電話するかを決めるだけです。最初の1週間:営業マネージャーが先月のメッセージを使い、AIが付けた急ぎの度合いと自分の判断を比べます。
見積書:AIは依頼の内容、標準価格、顧客の購入履歴を読んで見積書を下書きし、営業担当が確認して送ります。基準を超える値引きは営業マネージャーの承認を待ちます。最初の1週間:値引きの基準を紙1枚に書き出します。詳しくは営業・CRMワークフローをご覧ください。
カスタマーサービス:よくある質問と注文状況
書類に基づく回答:AIはRAG(検索拡張生成)で製品マニュアル、保証条件、過去の回答を検索し、LINE公式アカウントで答えるか、スタッフが送る返信を下書きします。チームリーダーが毎週、回答を抜き取りで確認します。最初の1週間:チャット履歴から最も多い質問を抜き出し、チームで正しい答えを横に書きます。
注文状況:AIはメッセージにある注文番号を読み取り、ERPや配送会社のシステムで調べて、配達日と追跡番号を返します。読むだけなので承認は不要です。苦情はすぐ担当者に回します。最初の1週間:配送会社のシステムから状況をどの方法で読み取れるかを確認します。詳しくは注文・配送状況の案内エージェントをご覧ください。
経理:請求書の読み取り、照合、債権回収
請求書:AIはタイ語の請求書とタックスインボイスをOCRで読み、発注書と入荷記録に照合します。一致したものは、Express、PEAK、FlowAccount、SAP Business One、Xero、Odooなど、すでにお使いの会計ソフトに買掛金として登録します。一致しないものは例外キュー(人の判断待ちの案件一覧)に入り、経理担当者が判断します。支払いはすべて権限者の承認を待ちます。最初の1週間:先月の実際の請求書を、手書きのものも含めて集めます。
照合と債権回収:AIは銀行の入出金明細とシステム上の記録を照合し、一致しない組み合わせだけを経理担当者に回します。支払いの督促文はAIが下書きし、担当者が送ります。最初の1週間:実際に使っている督促の手順を書き出します。詳しくは経理・財務ワークフローとタイ語文書のAI-OCRをご覧ください。
購買:購買申請、相見積もり、入荷確認
購買申請:AIは申請の内容と仕入先の見積書の写真を読み、残りの予算、過去の購入価格、取引先リストと照らし合わせて、金額に応じた承認者にLINEで3行の要約を送ります。最初の1週間:金額と承認者の対応表を書き出します。
相見積もりと入荷:AIは形式の違う見積書を一つの表にまとめ、購買担当者が選べるようにします。品物が届いたら、納品書の写真と発注書を比べ、一致しない行だけを倉庫の責任者に知らせます。最初の1週間:主要な仕入先から届いた直近の見積書を保管しておきます。詳しくは購買申請・承認ワークフローと購買・入荷ワークフローをご覧ください。
人事:社員からの質問、入社手続き、応募書類
社員からの質問:AIは就業規則、福利厚生の手引き、社内のお知らせを読み、休暇、経費精算、タイの社会保険についての質問にLINEで答えます。給与など個人に関わる件はすぐ人事に回します。最初の1週間:AIが回答に使う文書の最新版を人事が決めます。詳しくは人事・ITヘルプデスクエージェントをご覧ください。
入社手続きと応募書類:雇用契約が結ばれると、AIはIT部門にアカウントを依頼し、税と社会保険の書類を送り、すべてそろうまで催促します。入社日の前に人事が確認します。最初の1週間:職種ごとに必要なものを一覧にします。詳しくは入社手続きワークフローをご覧ください。応募書類では、AIが募集要件に沿って履歴書を並べ、理由を添えます。採否は面接担当者が一人ずつ決めます。最初の1週間:タイの個人情報保護法(PDPA)に沿って、応募者のデータをどれだけの期間保管し、誰が見られるかを決めます。
総務と書類業務:ファイリング、文書作成、データ入力
ファイリング:AIはLINEやメールで届いたファイルを読み、タックスインボイスか、契約書か、役所からの書類かを見分け、社内の基準で名前を付けて保管します。総務担当者が見るのは、システムが判断に迷ったファイルだけです。最初の1週間:ファイル名とフォルダー構成の基準を決めます。詳しくは顧客書類ワークフローをご覧ください。
文書作成とデータ入力:AIは社内システムのデータを手紙や契約書のひな形に入れ、権限者が確認して署名します。銀行のポータルや官公庁の申告サイトのようにAPIがないWebサイトには、RPAが代わりに入力し、送信の前に担当者が最後の画面を確認します。最初の1週間:最もよく使うひな形を一つ選びます。オフィス業務の自動化の全体像はAIオフィスの記事にまとめています。
物流・現場業務:作業伝票の締めと配車
作業伝票の締め:ドライバーが顧客の署名入りの納品書を撮影してLINEに送ります。AIは伝票番号と署名を読み取り、作業を締めて請求の対象に加えます。現場責任者が確認するのは、写真が不鮮明なものだけです。最初の1週間:ドライバーが実際に撮った写真を、傾いたものや暗いものも含めて集めます。詳しくは配送伝票・請求ワークフローをご覧ください。
配車:AIは確定した注文、配送エリア、空いている車両を読み、翌日の配車案を出します。配車担当者がそれを確定するか修正します。最初の1週間:配車担当者が頭の中に持っているルールを書き出します。
経営レポート:元のシステムから作る要約
週次の要約:AIはCRMの商談状況、会計ソフトの売掛金、ERPの在庫を読み、先週から何が変わったかを1ページにまとめます。各部門長が自部門の数字を確認してから配信します。最初の1週間:それぞれの数字をどのシステムから取るかを決めます。
数字への質問:経営者が「支払いが最も遅れている顧客はどこか」と尋ねると、システムがデータベースを読み取り専用で参照して答えます。最初の1週間:数字がまだチャットで回されるExcelの中にあるかどうかを確認します。そうであれば、この使い方は後回しです。
架空のケース
バンコクの電気設備の輸入卸売会社(社名と詳細は架空)には、仕入先の請求書、LINE公式アカウントからの問い合わせ、輸入書類が毎日届きます。社長は全部門で一度に始めたいと考えていましたが、最終的に同じ部品を使える三つの業務を選びました。
選んだのは、経理の請求書の読み取り、総務の輸入書類のファイリング、営業の問い合わせの登録です。最初の二つは同じ書類読み取りの部品を使います。三つ目は、経理のために作ったLINEの承認の仕組みを、基準を超える値引きに使い回します。1か月目は経理だけで始め、2か月目は新しい読み取りの部品を作らずに総務へ広げました。つまずいたのは小さな仕入先の手書きの請求書で、システムが合計金額を1桁読み違えました。それ以来、確信度の低い請求書は丸ごと人に回しています。
部門をまたいで最初の三つを選ぶ
最初の仕事に向いているかどうかは、三つの点でわかります。繰り返し発生すること、書類があること、すでに誰かが確認していることです。このカードを、部門長全員がそろう会議で一度使ってください。
最初の仕事を選ぶ表:繰り返し、書類あり、確認者あり
- ステップ1:書き出す。 各部門長が繰り返しの仕事を最大五つ、この記事と同じ4項目で書きます。
- ステップ2:採点する。 繰り返し、書類あり、確認者ありを、それぞれ0から3で採点します。
- ステップ3:共通の部品を探す。 点数の高い仕事のうち、同じ書類読み取り、文書検索、承認の仕組みを使う別部門の仕事に丸を付けます。
- ステップ4:三つ選ぶ。 三つの部門から一つずつ選びます。一つ目が安定してから二つ目を始めます。
まだ選ばない: 誰も確認していない仕事、間違えたら取り消せない仕事、データがまだ何か所にもある仕事。
| 部門 | 最初の仕事 | AIが読むもの | AIが作るもの | 承認者 |
|---|---|---|---|---|
| 営業 | 問い合わせの登録 | LINE公式アカウント、Webフォーム、メール | CRMの記録 | 営業担当 |
| カスタマーサービス | 書類に基づく回答 | マニュアル、過去の回答 | LINE公式アカウントでの回答 | チームリーダーが抜き取り確認 |
| 経理 | 請求書 | 請求書、発注書、入荷記録 | 買掛金の登録 | 経理担当、支払いの権限者 |
| 購買 | 購買申請 | 申請、予算、過去の価格 | LINEでの要約 | 金額に応じた承認者 |
| 人事 | 社員からの質問 | 就業規則、福利厚生の手引き | LINEでの回答 | 個人に関わる件は人事 |
| 総務 | ファイリング | LINEとメールのファイル | ファイル名と保管先 | 総務担当 |
| 物流・現場 | 作業伝票の締め | 納品書の写真 | 締めた作業、請求の対象 | 現場責任者 |
| 経営 | 週次の要約 | CRM、会計ソフト、ERP | 1ページの要約 | 各部門長 |
今日から始められる仕事、データを待つ仕事
下の項目をすべて満たす仕事は、今日から始められます。満たさない項目があれば、まずそこを直します。たいていはデータか確認者です。
- 毎週繰り返し発生し、担当者が5分で手順を説明できる。
- 入力がファイル、メッセージ、写真など、システムで開ける形で届く。
- 結果を入れる先のシステムに、APIかファイル取り込みの機能がある。
- 今日すでに誰かが確認していて、何を確認しているかを説明できる。
- 間違いが顧客、銀行、役所に届く前に直せる。
- テストに使える、先月の実際の書類と質問がある。
- 毎週のデモを見る担当者が部門の中にいる。
開発チーム向け · 四つの共通部品
どの例も四つの部品からできています。書類読み取りは、OCRとLLMで書類の種類ごとのスキーマに沿って項目を取り出す部品で、確信度(Confidence)の低い書類は丸ごと例外キューに入ります。文書検索は、担当者と版が管理された文書に対するRAGです。承認の仕組みは金額に応じたポリシーで、LINEに届き、タイムアウトと代理承認者を持ちます。システムへの書き込みはすべてここを通します。四つ目は、入力、出力、承認者を残す監査ログです。四つを共通サービスとして作れば、新しい部門は自部門のスキーマとポリシーを足すだけで済みます。ERPへの書き込みには、書類番号をキーにした冪等性(Idempotency)を持たせます。
まず一つの部門で始め、部品を使い回す
どの請求書を支払ってよいかは、社員が知っているルールです。そのためDNA Makerは、御社が選んだ最初の部門の担当者の隣に座るところから始めます。実際の書類を承認者まで追いかけ、それぞれの仕事をこの記事の4項目で書き出し、どの項目をAIに任せ、どの項目を人に残すかを決めます。
そのうえで、その部門のために共通部品を作り、すでにお使いのERP、CRM、会計ソフトにつなぎます。御社の実際の書類と質問でテストし、毎週、実データでデモをお見せします。スコープと価格は作業開始前に確定します。次の部門は同じ部品を使い、自部門のルールを足します。こうした仕事を、私たちはタイの銀行、病院、大手企業グループで行っています。タイ人スタッフ向けの社内AI研修もご用意しています。詳しくはAIワークフローのページをご覧いただくか、チャットでDreamに仕事の内容をお伝えください。
SOFTWARE ENGINEERING GLOSSARY
ソフトウェア開発用語集
| 用語 | 意味 | わかりやすい例 | 開発チームへの質問 |
|---|---|---|---|
| OCR | 画像やPDFの文字を読み取ってデータにすること | LINEで送られてきたタックスインボイスの写真を読む | 自社のタイ語の書類と手書きの書類で試しましたか? |
| RAG(検索拡張生成) | AIが答える前に社内の文書を検索させる方法 | 最新のマニュアルから保証条件を答える | システムが答えに使う文書は誰が更新しますか? |
| 例外キュー | システムが判断に迷い、人の判断を待っている案件の一覧 | 合計金額が発注書と合わない請求書 | このキューは誰が、どのくらいの頻度で見ますか? |
| 承認(Human Approval) | お金に関わる処理の前に、人が承認しなければならない地点 | LINEで支払いの一括処理を承認する | 金額の上限と承認者は自社で変えられますか? |
| 確信度(Confidence) | システムがどれだけ確かだと考えているかを示す点数 | 手書きの合計金額は点数が低く、人に回る | キューに回す基準値は誰が変えられますか? |
