- AIエージェントの費用は二つの請求書に分かれます。一度だけ払う開発費と、毎月払う運用費です。
- 価格を最も大きく動かすのは三つです。エージェントが触れるシステムの数、一度の誤りが生む損害、そしてデータを社外に出せるかどうかです。
- 最初のバージョンは一つのチャネルと一つの業務に絞り、成果を測ってから広げます。
- よい見積書は二つの請求書を分けて示し、運用費の各項目を誰に払うのかを書いています。
AIエージェントの価格は二つの請求書でできている
カフェを開く場面を考えてみてください。内装とエスプレッソマシンの代金は一度きりです。コーヒー豆と電気代は毎月かかり、店が繁盛するほど豆の減りも早くなります。AIエージェントの費用も同じ形をしています。一つ目の請求書は開発費、二つ目は運用費で、会話の数とエージェントがこなす作業の量に応じて増えていきます。
合計が一つだけの見積書は、たいてい一つ目の請求書の話をしています。二つ目は稼働後に届きます。エージェントとチャットボットの違いはAIエージェント、エージェンティックAI、生成AIの違いで説明しています。TCO(総保有コスト)を今の手作業と比べる方法は自社は手作業に毎月いくら払っているのか?をご覧ください。
開発費は六つの要素で決まる
開発費とは開発チームの作業時間のことで、どれだけ必要かは次の六つで決まります。
一つ目はチャネルです。LINE公式アカウント(LINE OA)、Facebook Messenger、Webサイトのチャット、アプリには、それぞれ独自のメッセージ形式と本人確認の仕組みがあります。チャネルを一つ増やすたびに、接続とテストがもう一式増えます。
二つ目はナレッジの出どころです。回答が、管理する人のいる一つの文書群にまとまっていれば作業は早く進みます。Excel、スキャンしたPDF、ベテラン社員の記憶に散らばっている場合は、チームが集めて業務の担当者に確認してもらってからナレッジベースに入れます。
三つ目は接続するシステムで、価格を最も大きく左右します。ERPから注文状況を読むだけのエージェントは、自分で注文を作るエージェントより早く作れます。データを書き込むには、権限の確認、相手のシステムが止まったときの処理、誰が何を指示したかの記録が必要になるからです。
四つ目は承認と引き継ぎの設計で、見積もりを頼む段階で抜けやすい項目です。エージェントが自分で実行すること、提案だけにとどめること、そして会話の履歴ごと担当者に引き継ぐタイミングを決めておく必要があります。担当者が案件を受け取る画面と監査ログもここに含まれます。
五つ目は言語です。タイの顧客はタイ語と英語を混ぜて書き、発音どおりに綴ることもよくあります。タイ語を理解する力はモデルによって大きく違います。タイ語に強いぶん一回あたりの利用料が高い大きなモデルを選ぶか、テストを増やして小さなモデルを使うかを選べます。日系企業で日本語や英語も必要なら、言語ごとに、その言語の実際の例でテストし直す必要があります。
六つ目はテストで、実際に使えるシステムとデモを分けるのはこの工程です。本番の前に、現場の責任者が確認した実際のチャットなど、貴社の業務の実例でテストし、何をもって合格とするかをチームと決めておきます。プロンプト、文書、モデルを変えるたびに、もう一度テストします。
運用費は毎月かかり、支払先はそれぞれ違う
この請求書には五つの項目があり、支払先がばらばらなことがよくあります。契約の日に、それぞれのアカウントが誰の名義になるのかを確認してください。
モデル利用料は、モデルに出し入れする文章の量で計算します。トークンという単位で数え、モデルの提供会社に支払います。チャットの数と長さ、そしてエージェントがほかのシステムを呼び出す回数に応じて増えます。
サーバー費は、システムを動かす環境、データベース、ログの費用で、クラウド事業者に支払います。プライベートLLMを選ぶと、呼び出しごとのモデル利用料が、自社の機器とその保守の費用に置き換わります。
チャネルの費用は見落としがちです。予約のリマインドのように、エージェントが後から顧客に送るメッセージは、貴社がすでに契約しているLINE OAプランのメッセージ通数に含まれる場合があります。
月額の保守は、稼働後の開発チームの作業時間です。実際のチャットを読んで誤った回答を探し、プロンプトを調整し、接続先のシステムが変わったときに直し、モデル利用料が予算を超えないよう見張ります。
ナレッジの更新は、価格や規定が変わったときの貴社の社員の作業時間です。請求書は届きませんが、担当者がいなければ、エージェントは古い情報を自信たっぷりに答え続けます。
チャットボットとAIエージェントの価格が違う理由
チャットボットは用意したナレッジから答え、仕事は回答で終わります。開発費の大半はナレッジ、チャネル、回答のテストに使われ、運用費の大半はチャットごとのモデル利用料です。
AIエージェントは、答えたあともシステムの中で作業を続けます。接続するシステムごとに権限と承認の作業があり、テストでは回答に加えて動作も確かめます。さらに一つの業務でモデルを何度も呼び出します。Tool Callingでシステムを呼ぶたびに、その結果をモデルに戻すからです。
もう一つの理由は、誤りの代償です。チャットボットが間違えても、顧客が聞き直せば済みます。エージェントが間違えると、予約が二重に入ったり、請求書が別の顧客に届いたりします。予約や注文の作成を始めたチャットボットは、その日からエージェントの価格体系に移ります。
架空のケース
バンコクのエアコン清掃・修理会社(社名・詳細は架空)は、LINE OAで依頼を受けています。受付担当者が同じ質問に答え、技術者に電話して訪問日を決めていました。最初のバージョンでは、AIエージェントが、受付リーダーが確認したナレッジベースをもとに、サービス内容と対応エリアの質問に答えます。開発費の請求書はチャネル一つ、ナレッジベース、実際の顧客の質問を使ったタイ語でのテストです。運用費の請求書はチャットごとのモデル利用料と小さなサーバーです。
二つ目のバージョンでは、エージェントがGoogleカレンダーで技術者の枠を予約します。開発費にはカレンダーとの接続、移動エリアのルール、予約が重なったときの受付担当者への引き継ぎが加わります。運用費は二つの方向に増えます。チャット一件あたりのモデル呼び出しが増え、リマインドのメッセージがLINE OAの通数に含まれるからです。チームが提案した三つ目のバージョンは、会計ソフトでの請求書発行と日本語での応答でした。これは開発費に接続、承認の手順、二つ目の言語でのテストを加えます。オーナーはこれを二段階に分けました。先に請求書から始めて受付担当者が一件ずつ承認し、日本語は予約の結果が安定してから取りかかります。
価格を最も動かす三つの質問
上の六つの要素の重みは同じではありません。次の三つの質問は一回の会議で答えられ、見積もりを頼む前に価格の方向を教えてくれます。
価格を決める三つの質問
- 質問1 エージェントが触れるシステムはいくつで、書き込むのか読むだけか。 システムを書き出し、書き込みが必要なものに印をつけます。書き込むシステムが一つ増えるごとに、一つ目の請求書には作業が、二つ目にはモデルの呼び出しが加わります。
- 質問2 一度の誤りでどれだけの損害が出るか。 顧客が聞き直せば済むなら、軽いテストで足ります。お金が別の口座に送られたり顧客データが漏れたりするなら、承認の手順、実際のケースを使ったより念入りなテスト、場合によってはより正確なモデルが必要です。
- 質問3 データを社外に出してよいか。 出せるなら、クラウドのモデルを使って利用した分だけ払います。タイの個人情報保護法(PDPA)や親会社の規定で出せないなら、プライベートLLMを置くことになり、呼び出しごとの利用料が機器と保守の費用に変わります。
この方法が使えないとき: どの業務をエージェントに任せるかが決まっておらず質問1に答えられない場合は、先に業務を選び、それから見積もりを頼みます。
最初のバージョンはどこまで小さくするか
よい最初のバージョンは、チャネル一つ、業務一つ、その業務を終わらせるのに必要な最小限のシステムでできています。毎日発生し、間違えても直せる業務を選びます。
稼働前に、モデル利用料の一日の上限と、上限に近づいたときのアラートを設定します。何を測るかも決めておきます。たとえば、担当者に引き継がずに完了したチャットの数です。数字が安定してから、次のシステムやチャネルを加えます。測り方はAIの成果を、自分をごまかさずに測るにはで詳しく説明しています。
| 要素 | 開発費 | 運用費 | 抑え方 |
|---|---|---|---|
| チャネル | チャネルごとの接続とテスト | LINE OAなどのメッセージ通数 | 顧客が最もよく使うチャネルから始める |
| ナレッジの出どころ | 収集、分類、確認 | 更新する社員の時間 | 最もよく聞かれる質問から始める |
| 接続するシステム | 接続、権限、停止時の処理 | モデルの呼び出し、保守 | まず読み取りだけ、結果が安定してから書き込み |
| 承認の手順 | 案件を受ける画面、監査ログ | 承認する人の時間 | お金と個人データに関わるものだけ承認を必須にする |
| 言語 | 言語ごとのテスト | 長い会話、または大きなモデル | タイ語から始め、ほかの言語は別の段階で |
| テスト | 本番前の実際のチャットでのテスト | 変更のたびの再テスト | 誤りの損害が大きい業務だけ深くテストする |
| データの置き場所 | プライベートLLMの導入 | 呼び出しごとの利用料に代わる機器の費用 | 機密データを扱う業務だけ社内で動かす |
よい見積書に載っているべきこと
合計が一行だけの見積書では、開発会社二社を比べられず、三か月目に何を払うのかもわかりません。貴社の側で準備しておくことはAI開発会社に依頼する前に準備することにまとめています。
- チャネル、エージェントが担う業務、含まれないもの
- 接続するシステムと、それぞれ読み取りだけか書き込みもするか
- エージェントが自分で実行すること、提案だけにすること、人が承認する場面
- 検収前に実際の例でどうテストするか、何をもって合格とするか
- 毎月の運用費を一項目ずつ、支払先とアカウントの名義つきで
- モデル利用料の見積もり方、上限、上限に近づいたときに通知を受ける人
- 月額の保守に含まれる作業と、ナレッジベースを更新する人
- 引き渡すもの(ソースコードやナレッジベースなど)
- 範囲外の作業の価格を、始める前に合意するかどうか
開発チーム向け · モデル利用料が発生する場所
モデルを呼び出すたびに、システムはコンテキストをまるごと送り直します。システムプロンプト、RAG(検索拡張生成)で取得した文書、チャット履歴、ツールの定義です。そのため利用料は、質問の長さよりコンテキストの大きさに応じて増えます。急増の原因になりやすいのは、何周もするTool Call、リトライ、テストの実行、文書が変わったときのEmbeddingの作り直しです。抑える方法は、分類のような作業を小さなモデルに回すモデルルーティング、古いチャット履歴の要約、Prompt Caching、一つの業務あたりのTool Call回数の上限、会話ごとのトークン記録、一日単位の予算アラートです。多くのモデルは、同じ長さの英語よりタイ語の文章を多くのトークンに分けるため、実際の顧客チャットで見積もってください。
AIエージェントの見積もりで、私たちは二つの請求書を両方お見せします
DNA Makerは、まずその業務を毎日担当している社員の方々から話を聞きます。そのうえで、チャネル、接続するシステム、人が承認する場面を明記した範囲書をまとめ、毎月の運用費を一項目ずつ、支払先とアカウントの名義とともに記載します。貴社は二つの請求書を両方見てから判断できます。作業にあたるのは、すべて私たち自身のチームです。
範囲と価格は、作業を始める前に固定価格として合意します。最初の概算は、チャットページのDreamにお尋ねください。Dreamは私たちが自社で作ったAIエージェントで、数分で概算をお出しします。私たちが提案する最初のバージョンは、たいていチャネル一つと業務一つで、月額保守プランがつきます。データを社外に出せない場合は、貴社のシステムの中にプライベートLLMを導入します。詳しくはAIエージェント&チャットボットとLINE OAのAIチャットボットをご覧いただくか、Dreamに聞いてみてください。
SOFTWARE ENGINEERING GLOSSARY
ソフトウェア開発用語集
| 用語 | 意味 | わかりやすい例 | 開発チームへの質問 |
|---|---|---|---|
| TCO(総保有コスト) | 開発費と運用費を合わせた、システムの使用期間全体のコスト | 開発費に、契約期間中のモデル利用料と保守費を足したもの | 提示された合計に二つ目の請求書は含まれていますか? |
| トークン | モデルが利用料を計算するために数える、文章の小さな単位 | 長いチャットでは一回あたりのトークンが増える | 一つの会話で使うトークンはどれくらいで、実際のチャットで測りましたか? |
| Tool Calling | エージェントがほかのシステムの呼び出しを要求する仕組み | 時間を提案する前に、エージェントが技術者のカレンダーで空きを確認する | 一つの業務でシステムを何回呼び出し、上限はありますか? |
| プライベートLLM | 自社が管理する機器で動く言語モデル | 社内のサーバールームで動く社員向けアシスタント | 機器の費用は、クラウドのモデルと比べてどうなりますか? |
