ARTICLE 04 · Organization Design · 2025-12-21

10人のチームを5人にできるか? AIで業務プロセスを設計し直す方法

AIで人員を減らせるのは、ツールを買って社員の作業が速くなるのを待つときではありません。仕事の流れを組み直し、価値を生まない手順を削り、役割をまとめ、定型的な仕事を最初から最後までシステムに任せたときです。

10人のチームを5人にできるか? AIで業務プロセスを設計し直す方法
要点
  • 「何人減らせるか」から考え始めるのはやめましょう。まず、実際の仕事のどこで時間が失われているかを見ます。
  • 仕事を速くする前に、そもそも存在すべきでない仕事をなくします。そうしないと、不要な作業を速くするためにお金を使うことになります。
  • 人員についての判断は、実際の数字を1サイクル分すべて見てから下します。

1. 10人のチームを本当に5人にできるのか

正直に答えると、できる場合もあれば、できない場合もあります。すぐに「確実にできます」と答える人は、たいてい実際のデータをまだ見ていません。先に答えを出せるのは、今チームの時間が何に使われているかという問いです。

一部の業務プロセスでは可能です。ただ、仕事の中身がわかる前に人員の目標数を決めるべきではありません。10人のチームが時間の半分をデータのコピー、書類の作成、進捗の確認に使っているなら、人の手作業(Human Touch)を50%減らせば、チームを小さくするか、2倍の量をこなせるようになるかもしれません。一方、仕事の大半が交渉、現場の確認、取引先との関係づくりであれば、同じ目標は現実的でないかもしれません。

出発点にするのは、減らしたい人数ではなく、必要な処理量です。たとえば、月に5,000件を処理し、顧客には15分以内に返信し、ミスは1%未満に抑える必要があるとします。そこから、システムが何件を処理し、人が何件の例外を見て、人の作業が何時間必要になるかを設計します。こうして計算すれば、一律のコスト削減を宣言するよりも筋の通った判断ができます。

問いを変える「何ポジション減らせるか」から、「AIを導入した後、この業務プロセスでは1件あたり何分の人の手作業が必要か」へ。後者の数字はテストして改善できます。前者の数字は、新しい働き方を見る前からチームの反発を招きがちです。

2. 実際の出来事から業務フロー図を作る

3年前に書かれた文書から始めるのはやめましょう。システムに残った記録から、仕事が実際にどう流れているかを見ます。このデータはチームの思い込みとかなり食い違うことが多く、だからこそ役に立ちます。

不要な仕事を先に削り、残ったものを自動化する
不要な仕事を先に削り、残ったものを自動化する

業務プロセスを1つ選び、実際の仕事を最初から最後まで追いかけます。担当者、開いているシステム、入ってくるデータ、行われる判断、実際の作業時間、待ち時間を記録します。「作業時間(Touch Time)」と「待ち時間(Wait Time)」は分けて考えてください。作業そのものは40分で終わるのに、順番待ちで3日かかることもあるからです。同じ承認を待ち続けるなら、入力時間を20分に縮めても、顧客に仕事が早く届くことはありません。

社員が読む、要約する、コピーする、形式を変える、データを探す、比べる、リマインドする、といった作業をしている箇所に、すべて印をつけます。ここがAIと自動化の候補です。信頼関係を築く、結果に責任を負う、例外について判断するといった箇所は、人に残すべきです。

工程分析のための質問対応の方向性
受け付けデータが複数のチャネルから入ってくるかデータを自動でまとめ、振り分ける
準備何を探したり、コピーしたりする必要があるかAIが情報を集めて下書きを作る
判断ルールが明確か、例外が多いか自動のルールで処理するか、人に回す
引き渡しどの書類を作り、どのシステムを更新する必要があるかワークフローがすぐに次の処理へ進む
フォローアップ誰が覚えておいて催促するのか出来事をきっかけに通知する

3. 自動化の前に、不要な仕事を削る

不要な手順を速くするだけの自動化は、無駄であることに変わりありません。確かめたいのは、すべてのレポートに実際の読み手がいるか、同じデータが何回入力されているか、何重もの承認が本当にリスクを減らしているのか、それとも昔の名残にすぎないのか、会社の手元にすでにある情報を顧客がわざわざ送らされていないか、といった点です。AIをつなぐ前に、削る、まとめる、標準化するという作業を済ませておきます。

必要な人員は、今の人数でなく、実際に測った作業量から計算する
必要な人員は、今の人数でなく、実際に測った作業量から計算する

たとえば、ある会社では、社員が営業、管理職、経理向けに3種類の要約を作っていました。AIの仕組みを3つ作るより、共通のデータを1つに決め、各部門が必要な見え方で開けるようにするべきです。別の会社では、すべての商談で値引きの承認が必要でしたが、その80%は標準の範囲に収まっていました。この場合は、自動承認の範囲を決めたほうが、AIで承認依頼メールの下書きを速く作るよりも、待ち時間をはるかに大きく減らせます。

正しい順序なくす(Eliminate)→ 簡素化する(Simplify)→ 標準化する(Standardize)→ 自動化する(Automate)→ AIを加える(Add AI)。AIから始めると、本来なくてよかった業務プロセスをまねるために、複雑なシステムにお金をかけることになります。

4. 実際に使える「Human + AI」のチームモデル

仕事を3つのレーンに分けます。1つ目はStraight-through(自動完結)で、システムが受け付けから完了まで人の手を介さずに処理する定型的なケースです。2つ目はReview(確認)で、AIがすべてを準備し、人が短時間で確認して承認します。3つ目はException(例外)で、データがそろっていない、リスクが高い、特別な顧客であるといったケースを専門の担当者に回します。

定型的なケースはシステムを流れ、例外は情報がそろった状態で人に届く
定型的なケースはシステムを流れ、例外は情報がそろった状態で人に届く

目指すのは人の順番待ちに並ぶ仕事を減らすことで、すべての仕事を自動のレーンに通す必要はありません。たとえばサービスチームなら、定型的な質問の60%をシステムが完了させ、25%は回答を準備して人が確認し、15%を専門の担当者に回す、という形が考えられます。そうすれば、顧客が増えても今と同じ人数をそろえる必要はありません。

チームリーダーの役割は、仕事を割り振って進捗を追いかけることから、例外のダッシュボードを見て、システムが人に回した理由を分析し、データやルールを調整して自動完結率(Straight-through Rate)を上げることへと変わります。社員に求められるのは、品質を確認する力、難しいケースを解決する力、整理された形でフィードバックを返す力です。

5. 必要な人員を、感覚でなく作業量から計算し直す

「月あたりの件数 × 1件あたりに人の手がかかる分数 ÷ 1人が月に生産的に働ける分数」という簡単な式を使います。仮に月6,000件あり、これまで1件12分かかっていたとすると、合計72,000分です。新しいシステムの導入後、65%が自動で完了し、25%は確認に3分、難しい10%は1件20分かかるとすれば、人の作業量は16,500分になり、75%を超える削減になります。

社員が月160時間をまるごと生産的に使えるとは考えないでください。会議、研修、休暇、管理業務の時間を差し引く必要があります。一般には、実働100〜120時間程度の控えめな数字を使い、さらにピーク時や障害に備えたバッファを上乗せします。余裕なく見積もった体制は、作業量が増えたときやAIのサービスが止まったときに破綻します。

STP Rateシステムが自力で完了した仕事
Review Min.1件あたりの平均確認時間(分)
Peak Buffer作業量が多い時期のための予備の処理能力

6. 人が問題を隠さないように移行を進める

AIの改善に役立つフィードバックがすぐに解雇につながるとチームが信じていれば、社員にはノウハウを伝えない理由も、システムが使えないことを黙っている理由も生まれます。経営者は計画を率直に伝え、試行期間、判断の基準、別の役割に移る機会をはっきり示すべきです。守れない約束はせず、そのかわりに公平な扱いと準備の時間を用意します。

開発チーム向け · 技術的な詳細

まずは、作業量が増えても人を増やさないところから始め、可能であれば異動や自然減を先に活用します。業務プロセスの責任者、AI品質レビュー担当、カスタマースペシャリスト、自動化コーディネーターといった新しい役割を定め、実際の仕事に結びついた研修を用意します。システムの面倒を見る人を残さずに人員を減らすと、稼働開始から数か月でパフォーマンスが落ちます。

インセンティブの基準には、サイクルタイム、品質、対応できる顧客数といったチームの成果を使い、忙しそうに見えた時間では決めません。システム上の誤りを見つけた社員は評価されるべきです。そうした情報が、規模を広げる前に問題を防ぐ助けになるからです。

7. システムへの依存を強めた少人数チームのリスク

人が減ると、ノウハウや、いざというときに代わりを務める力が失われることがあります。システム障害に備えた運用手順書、最低限の手作業での業務の進め方、システムごとの責任者の一覧が必要です。ワークフロー全体を理解しているのが外部の開発者だけ、という状態は避けてください。会社は自社のデータをエクスポートでき、自社のログにアクセスできなければなりません。

気づかれにくいミスにも目を配ります。たとえば、AIが分類を間違えているのに誰も気づかない、顧客がもっともらしいのに問題を解決しない回答を受け取る、システムが簡単な仕事ばかり拾って難しい案件がたまっていく、といったケースです。サンプリングのルールを決めて自動処理の結果を人が抜き取りで確認し、リスクの高いケースを定期的にテストし、作業量が増えたときのコストも確認します。

人の処理能力を減らす前に
  • ピーク期を少なくとも1回、システムが安定して乗り切った
  • デモの結果でなく、数週間分の品質データがある
  • AI、API、基幹システムが止まったときの業務の進め方が決まっている
  • チームの体制が変わった後も、業務プロセスの責任者と品質の確認担当がいる

8. 8週間の実行計画

  1. 1週目:業務プロセスを選び、作業量、時間、品質、人数のベースライン(導入前の基準値)を記録します。
  2. 2週目:業務フロー図を作り、不要な手順を削り、3つの作業レーンを決めます。
  3. 3〜4週目:AIが準備して人が確認するシステムを作り、過去のデータでテストします。
  4. 5週目:小さなチームで試し、実際の人の手作業を測り、例外を記録します。
  5. 6週目:定型的なケースに限って自動完結のレーンを開き、監視の仕組みと停止ボタンを加えます。
  6. 7週目:処理能力を計算し直し、役割と予備の当番表を設計します。
  7. 8週目:データにもとづく人員計画を添えて、拡大するか、調整するか、やめるかを決めます。

まとめ:10人のチームを5人にできるかどうかは、設計し直した後の定型業務の割合と、人の手作業がどれだけ残るかで決まります。業務プロセスとサービス水準から考え始め、繰り返しの仕事はAIに任せ、例外のレーンを作り、実際のデータから処理能力を計算してください。コスト削減を長続きさせるには、品質と、いざというときのノウハウと、責任の所在を同時に守る必要があります。

DNA MAKER · SOLUTION BLUEPRINT

業務プロセスを先に設計し直し、人数の問題はその後で考える

使える業務フロー図は、3年前に書かれた文書からは作れません。実際に仕事をしている人の動きから作る必要があります。そこでDNA Makerは、システムに残った記録をもとに、過去に実際に起きた出来事から業務フロー図を作ります。見るのは、仕事が各ステータスに入った時刻と出た時刻、修正の回数、仕事が最も長く止まっていた箇所などです。このデータはチームがそれまで信じていた流れとかなり食い違うことが多く、そこに価値があります。人員削減の話をする前に、まず不要な仕事を削ります。存在すべきでない仕事を速くしても、投資が無駄になるだけだからです。

チームリーダーと一緒に進める手順

次に、システムがどの部分を受け持ち、人がどの部分を受け持ち、品質をどう測るのかを明記した「Human plus AI」のチームモデルを設計します。そのうえで、作業キュー、承認ポイント、チームリーダーが毎週の実際の作業量を確認するダッシュボードといった、そのモデルを支えるシステムを作ります。業務プロセスを変えた後の数字を少なくとも1サイクル分見るまでは、人員について判断することはおすすめしません。人員を減らすべきかどうかでチームの議論が続いているなら、まずは実際の業務プロセスを一度測るところから、私たちにご相談ください。

ソフトウェア開発用語集

ここに挙げる用語は、仕事の進め方を測り、設計し直すことについて話すときに使います。

用語意味わかりやすい例開発チームへの質問
Process Map実際の仕事の順序を、各段階の担当者と所要時間とあわせて表した図注文を受けてから商品を出荷するまでの仕事の流れを描いた図この図は実際のデータをもとにしていますか?それともヒアリングだけで作りましたか?
Bottleneck受けられる仕事の量に限りがあるために、業務プロセス全体を遅くしている箇所すべての仕事が、同じ1人の承認を待っている今のボトルネックはどこにあり、何をもとに測りましたか?
Wait Time誰も手をつけず、仕事がただ待っている時間書類の確認は10分で終わるのに、承認を2日待っている全体の時間のうち、実際に作業している時間は何%ですか?
Capacityチームやシステムが一定の期間に受けられる仕事の最大量チームは週に200件まで対応できる作業量が30%増えたら、何を増やす必要がありますか?
Dashboard重要な数字を1つの画面にまとめ、状況がすぐわかるようにしたものチームリーダーが毎週、たまっている仕事と待ち時間を確認するこの画面の数字はどのくらいの頻度で更新され、どこから来ていますか?